BOOK SOMMELIERS





原島康晴

エディマン社主宰



「インディーズ出版の楽しみ」



「媒介」としての機能、その意義とは。
出版社をひとりで背負い、「異才の発掘」を担う。





知っている「出版社」って

皆さん、知っている出版社ってどれくらいありますか。

名前を挙げていくと、小学館や集英社、講談社、角川書店などなどいわゆる最大手出版社。
その次は、自分の携わっている分野(仕事でも学業でも)に強いとされる出版社。
本が好きな人や新しい情報に敏感な人は新聞広告に出稿している出版社の名前が挙がるでしょう。
少ない人でも5~6社、多くても30社くらいでしょうか。

それ以上知っているというあなたは、もしや業界関係者ではありませんか。

日本には2009年現在、約4000社の出版社があると報告されています。

紹介が遅れましたが、ぼくはその4000分の1の出版社エディマンを主宰しています。タイトルにあるとおり、ひとりで出版社をやっています。

出版は個人芸か

ぼくがエディマンをはじめたのは、2000年10月です。
最初の本を2002年に出版して現在まで5冊の本を出版しました。

大学卒業後、小さな英米文学系の出版社に就職しました。
その時から頭の中では独立することをイメージしていました。
編集職に就く人ならもちろん、どんなに抽象的であれ自分で出版してみたい本があるでしょう。ぼくにもあったのです。

そして、ぼくの頭に思い浮かぶ企画はどれも、あんまり売れそうなものではなかった(笑)。

あまりに短絡的ですが、自分の企画を出版したいから独立したわけです。
学生のころからいくつかの小さな出版社でアルバイトをしていましたから、出版実務はおおよそ心得ていました。

小さいがゆえに、アルバイトでも社員並みのことを勉強できたのです。
これは本当に役に立つ経験でした。

それから、もうひとつ知ったことは、出版社はひとりでもできる、ということでした。

著者との出会い、原稿をもらってくる、デザイナーと出会う、印刷業者・製本業者にできるだけ安くやってもう(支払いも延ばしてもらう)、などなど。
それらは個人の工夫でなんとかなることです。

売り方にしても、トークイベントや出版記念パーティなどなどこれも個人の工夫。

こうして考えると、出版というのは結局、個人芸だといえると思います。

特色のある出版社ってどうなの

個人芸にはいい面も悪い面もあります。

自分にしかできない出版物を発行するんだ、という意気込みは必要かもしれません。

でも、いまいちばんぼくが悩ましいのは、自分の作った本に力が入ってしまう、ということです。
「力が入る」というのは、情熱をもって出版するということですから、必ずしも否定されるべきことではありません。

しかし、1年に多くても数冊しか出版していないですから、自分の思い入れが強くなりすぎてしまいます。

本に対して、索引はもちろん年表や地図など、読者のたすけになりそうなものを必ず入れてしまう。装丁や用紙などにもついついこだわってしまう。

この「力の入った」感じが、徐々に「エディマンらしさ」を作ってくれるのですが、結果的に定価が高くなってしまったり、読者を遠ざけてしまっているような気もします。

もうすこし安上がりに「エディマンらしさ」をつくり上げていくことが課題です。

媒介としてのポジション

これまでは、自分の出版物が世の中に認められたい、という気持ちが少しはありました。文章にしてみるとずいぶん大それたことです。

だけど、出版という職業には、少なからずそういう側面があるのではないでしょうか。

それを実現するのに最も近道なのは、有名な著者に頼ることです。
典型的なのは、角川書店から幻冬舎が独立したときの出版物です。
一気に著名人が幻冬舎から本を出しました。
これは著者が編集者についていくというわかりやすい例でもあります。

ぼくは残念なことに、そういった売れる思考が身についていませんから、すでに有名な著者に書いてもらうという発想にはピンときません。
それでも上記のような気持ちをもっていたのですから困ったものです(笑)。

いまではだいぶ力も抜けて、出版をしていくなかで少し違う喜びを見つけつつあります。
それは、自分が出した本の著者が、もう少し大きな出版社から本を出すことです。

著者を見つけてくるのはたいへんなことですが、その著者の第一歩をともに踏み出す現場に携わることができるのは幸せな経験です。

小さな出版社は著者に対して充分な印税を支払うことはできません。
そのうえ、なかなかに金銭的な成果を生み出すのが難しいがゆえに、著者に営業的な努力も求めます(もちろん無理のない範囲で)。

それでもどうすれば自分たちの出版物が読者に届くのか、そこに工夫があるのだと思います。

個人芸と言ってきましたが、もちろんたいせつなのは著者です。

著者~出版社~読者と、媒介として居心地良く、邪魔にならないようにやっていこうと思っています。




エデイマン作品集

『ガルシア・マルケスひとつ話』マコンド著

3,360円(税込) 2009年04月 発行 ISBN 978-4-88008-397-1

ガルシアマルケス.jpg

『ライン・オン・ジ・アース』小野博著

2,940円(税込) 2007年11月 発行 ISBN 978-4-88008-380-3

ediman.bmp


『ラテンアメリカ主義のレトリック』柳原孝敦著

2,940円(税込) 2007年09月 発行 ISBN 978-4-88008-370-4
ラテンアメリカの政治的敗北、芸術的勝利!?

『シンコペーションラティーノ/カリビアンの文化実践』杉浦勉 (他)編著

2,520円(税込) 2003年03月 発行 ISBN 978-4-88008-290-5
ダンス、音楽、ライティング、信仰からみるマイノリティ実践。









原島康晴
1973年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。
2000年、エディマン(edición iman)設立。
3児の育児に追われつつ書籍編集に携わる。

ページの先頭へ

  • リーガルエンターテイメント

  • 映像の世界

  • 建築の世界

  • 漫画の世界